2021年3~4月の読書記録

4月上旬に中国語の資格試験を控えていたこともあり、3月の読書は2冊にとどまった。

4月は試験後から読書を再開し、目標の4冊/月をなんとかクリア。
感想書くのすら遅れ気味なのはなんとかせんといけませんね(他人事)


ベッドで本読むと必ず寝落ちするし姿勢が悪くなるので、
日本に帰ったら趣味時間用のチェアが欲しいなと思う今日この頃。

<3月>
・司馬遼太郎「国盗り物語(一)斎藤道三・前編」新潮文庫(1966年)
・司馬遼太郎「国盗り物語(二)斎藤道三・後編」新潮文庫(1966年)


松波庄九郎(のちの斎藤道三)が美濃国を手中に収め、
天下統一の野望を次世代(信長)へバトンタッチするまでを描いた時代小説。

寺院育ちの庄九郎が油売りの豪商・山崎屋の女主人を手籠めにして財を成し、 
智略と武力を以て美濃国(ついでに殿の女も)を手中に収めていく様は
さながら戦国の島耕作といった風情で、権力・金・女を手中にしていく
王道のサクセスストーリーという感を受けた。

勿論、権力抗争と男女の痴情という俗っぽい要素だけでなく
作者の緻密な取材と歴史考察が物語の面白さと世界観の重厚さを
支えていることは司馬遼太郎小説なので言うまでもない。

あくまで小説としての脚色があるだろうから
どこまでを信じていいかというのはあるが、

楽市楽座は信長に先駆けて既に道三が実行していたというのは初耳であった。

商人としての側面を持っていたからこそ、既得権益と対立してでも
領土経済を振興する重要性にいち早く気がついていたようである。

また庄九郎が居城として築城する稲葉山城の小説内での描写が
非常に雅美で印象に残ったので、いずれ日本に帰ったら
物語の舞台を旅してみたい。

<4月>
・グレイス・ペイリー著、村上春樹訳「最期の瞬間のすごく大きな変化」文春文庫(2005年)

アメリカの女流作家グレイス・ペイリーの短編集。
長い作家生活の中で残したのは三冊の短編小説と寡作ではあるが、
本国では熱狂的な支持を受けている作家であるとのことである。

元々の文体が難解であろうというのに加え、
訳者が村上春樹氏なので読み進めるのはスムーズでは無かったが、
ブルーチーズというかホヤというかそういう中毒性があるように感じた。

収録されている17編の短編は作者自体を投影したと
思われる女性「フェイス」とその周辺人物を描いたもの、
ニューヨークの街で起こった出来事を伝聞を基に描いたと思われるものの
2つに分かれる。

前者に登場する人物たちは主人公のフェイスを含め、
何かしら家族間や男女間のトラブルを抱えた人間ばかりである。
それぞれの抱えるトラウマや葛藤、心の傷を互いに隠しつつも、
埋め合うように寄り添って暮らしている。

後書きで訳者の村上春樹氏が作者自身による朗読会の聴衆は
ほとんど女性ばかりだったと書いていたがこの辺りが
女性の共感を得る要因になっているのではないかと感じた。


・寺山修司「ポケットに名言を」角川文庫(1977年)

寺山修司が小説や映画、詩集から蒐集した名言を紹介している書籍。

自分自身、言葉が生きる上での力となっている自覚はあるものの、
せいぜい、迷った時に指針となる言葉があるかなという程度で、
人生を変えるほどの言葉というのにはまだ出会ってはいない気がする。

本書で紹介されている中では井伏鱒二が于武陵の「勧酒という詩の
訳した際の「花に嵐の例えもあるさ さよならだけが人生だ」という
言葉が見事だなと思った。元の詩の該当部分は以下のとおりである。

花発多風雨
人生足別離

普通に訳せば「人生に別離はつきものだ」となりそうなところを
「さよならだけが人生だ」と言い切ってしまうのがとても良い。
フジファブリックの「若者のすべて」に通じるものがある気がする。


・長谷川町蔵、大和田俊之「文化系のためのヒップホップ入門」アルテスパブリッシング(2011年)

ヒップホップというジャンルが成立した経緯と
現在までのアメリカ東西でのシーンの変遷を対談形式で紹介している一冊。

読む前はどうにも取っ付きづらいジャンルという印象を持っていたが、
楽しみ方のヒントを充分に貰えたような気がする。

ヒップホップの精神性にまで踏み込んでいるのが興味深く、
ヒップホップは音楽ではなく競技である、商業的な成功とシーンの平定を
目的としているから、ロックのように反商業主義と商業主義的な成功という
二律背反に苦しむ必要がないといった論考も面白かった。

・畑村洋太郎「失敗学実践講義・文庫増補版」講談社文庫(2010年)

様々な企業の事故や失敗の事例の分析に関わってきた著者が
その直接的原因や背景を紹介する一冊。

登場する事例はどれも社会的に大きな話題となった事件や事故ばかりで
その裏側に素直に感心するとともに、それらがどういった経緯で生じたかという
組織的・社会的な要因の分析については、一企業人、一社会人として
非常に示唆的な内容が含まれていた。

特に交通機関における安全という面では、運営会社のみならず、
顧客である我々自身が安全運行の妨げとなるような事項を
起こさないことが大切(搭乗時間の厳守、駆け込み乗車しない)
というのは運営会社自身から客に厳しく言うのは限度が
あるだろうから、何らかの形で社会全体の前提として共有
できれば良いのになと感じる。

余談になるが、昨年の春頃にコロナ感染のクラスターが発生して
横浜に停泊していたダイヤモンドプリンセス号の姉妹艦、
サファイア・プリンセス号が建造中に火災事故(死者0人)を
起こしていたことを本書で紹介されていた事例の中で知った。

船が沈んだわけではないからタイタニック号の3姉妹艦よりは
幾分かマシであるが何とも数奇な運命であると感じた。


終わり

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